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2005年10月12日 (水)

曹源寺さざえ堂

群馬県太田市東今泉町165
1793

 日本三大さざえ堂というものがある。日本三大~というのは大抵のものにあるが、さざえ堂などというマイナーな物でも決まっているから面白い。そもそも全国に現存するのは五つか六つしか無いのだから、半分は該当してしまう。

 群馬県太田市に三大の内のひとつ、曹源寺がある。東北道を佐野インターで降りて、国道50号を30分くらい西進すると辿り着くが、看板も目印もなく、間近まで行っても見つけるのに苦労する。
 建物は外から見ると二層か三層か判然としない。背の高いお堂に裳階をめぐらせたような感じで、木造建築にしては大きく感じられる。
 アルミサッシが堂々とはめ込まれていたり、改変はかなり大胆に行われている。おそらくはそれが原因で重文になっていないのだと思われるが、観光地化もしていない中でこの建物を維持するには仕方ない処置だろう。

さざえ堂はその名の通り螺旋状の動線を持ち、入り口から出口まで一方通行であり同じ場所を通ることも無いように建てられている。とはいえ、さざえというにはこの曹源寺や埼玉の成身院の建物は平面的に面白くはなく、動線は仕切りによって螺旋状に区切られているに過ぎない。会津のさざえ堂に比べると純度は遥かに劣る。

 見学には受付の老人に申し出れば良い。ここの向かいに住んでおられるようだが、住職という感じでもなかった。淡々と拝観料を受け取り、御自身で吹き込まれた解説テープを流してくれる。14時くらいには堂を閉めて家へ帰ってしまうようだったので、見に行くのなら早めの時間がいい。
 誰もいない堂内にしわがれ声がこだまするのは何ともいえず、光もあまり差し込まない薄暗い回廊にずらりと観音像が並ぶのは異様な光景だ。特に外からは存在が伺えない2階部分は採光が少ない濃密な空間になっていて、胎内めぐり的な趣もある。

 建築そのものはそれほどクオリティの高いものではないが、立地なども含めた全体としての曹源寺は素晴らしい。訪れた時にその場所にどれほど没入出来るかについて、そこが消費の対象になっていない事がいかに重要か分かる。

ちなみに、このさざえ堂を巡ると秩父、坂東、西国の観音札所100ヶ所を巡礼したのと同じ意味があるとされている。非常にお手軽な話で、いかにも日本人らしい。

 日本には長期休暇を取るという習慣がない。せいぜい週休2日が少しは普及してきた程度で、長い休みといえばみんな一斉に休む正月、GW、お盆くらい。だから日本人は自分たちで思っているよりも強く、住んでいる土地に縛られている。欧米のように一ヶ月の休みをとって家族ごと生活の場を移すなんてもってのほかだし、一週間程度の旅行だって実現不可能に近い。そんな状況はさざえ堂が建てられるようになった江戸後期でも同じで、だからこういう場が作られたのだろう。

 それともうひとつ、日本における信仰のあり方も影響しているだろう。現代でもそうだが、日本人は信仰心が希薄だ。神仏をさして重んじておらず、自分の都合に合わせて解釈する節がある。このさざえ堂のような簡易巡礼は、巡礼というものの本質に反しているので本来は宗教的に許されないのではないのかと思うが、日本ではそれもありなのだ。そういういい加減さは良い所でもあり、原則をないがしろにしてしまう点で危ない所でもある。

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コメント

会津のさざえ堂は何度か行きましたね。かなり強烈でした。曹源寺もそのうち行きたいですね。

投稿: ogata | 2005年11月24日 (木) 18時47分

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